教師生活回想記②~新学期の始まり~

昨日までがらんとしていた教室が、一夜明けて蜂の巣をつついたような騒ぎになる。

今日から新学期の始まりだ。

真っ黒に日焼けした子どもたちが、ひっきりなしにおしゃべりをしている。

  ****

「はあい。体育館に行くよ」


始業式が始まって、ものの10分もしないうちに、真っさおな顔したS君が、近づいてくる。

「先生。気持ち悪い」

2学期の始まりは、立ちっぱなしで話を聞くことに耐えられない子が続出する。

一人。また一人。

先生たちは、子どもを保健室へ送りながらため息をこっそりつく。

(夏休み、彼らは何して過ごしてたんだろう・・・。)

(校長先生、もういいから話終わってくれないかなあ・・。暑いし、たおれるし・・。)

  ****

「はい。夏休みの宿題を集めます!」

教室に帰って、声をかけると、「あっ、やべえ。忘れた」

新学期早々、イライラする言葉が教室を飛び交う。

(どうして?
どうして、長い休み明けの大事なスタートの日に、宿題を忘れてこれるんだ?
昨日、おまえは何をしていたんだ!)


忘れたことを言いに来た子どもの出方次第で、この怒りはそのままぶつけることもあるが、

大抵の子どもはしおらしく

「先生、忘れてしまったので、明日、必ず、持ってきます」

と言いに来るので、こちらも大人。

「わかりました。明日必ず持ってらっしゃい。連絡帳に書いて」

と言い放つ。

また、ため息が出る。

  ****

ひとしきり、夏休みの話をしたり、次の日の予定を話したりしているうちに、新学期当日は終わりになる。

防災訓練をして、さよならだ。

(あの暑い校庭に、ヘルメットなんかかぶって、また並ぶのかあ・・。)

うんざりした気持ちを子どもらに気づかれないよう、そっとため息にまぎらわす。

そのとき。ちょこちょこっと、Mちゃんが寄ってきた。

「先生。これ、あげる」
手には、カラフルな小さい紙袋。

「なあに?」

「富士山にね、行ってきた、おみやげ」

「へえ~。富士山。すごいね。てっぺんまで登ったの?」

こくんとうなずいたと同時に、サイレンが鳴る。避難訓練だ。

「ありがとうね」

てくてく遠ざかるMちゃんに手を振った。

  ****

紙袋を除くと、お土産の置物と一緒に、手紙が入っていた。

「先生、2がっきもまたよろしくおねがいします。 Mより」

さすがMちゃん。

かわいいじゃない。

こういうの、いいのよねえ。

にんまりしながら、机の上に視線をやると山盛りの夏休みの宿題。

これから一週間は、丸つけとコメント書きに追われる。

はああ。

・・・。

がんばろ!

  *************************


コメント書きと丸つけは、教師の仕事のメインです。

私はあまり嫌いではなく、むしろ丸つけしたいから教師になったといえるくらい、丸つけ好きでした。

ただ、唯一この仕事がいやになる時期が、夏休み明けでした。

子ども一人につき、約40日間分。クラス40人だとしたら、最低1600枚の丸付けをしなくちゃいけない。

さらに、宿題は1種類ではない。読書感想文、夏休みの日記、自由研究・・・。

丸だけでなく、コメントを書きたいものもある。

つける量が、半端ではない。

この時期だけでいいから、丸付けのバイトさんが欲しいなあ。

いや、提出物チェックだけでもいい。はんこ押しだけでもいい。一日、一時間でいい。手伝ってほしい!


何度も心の底から叫んでみましたが、実現できませんでした。
















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